増え続ける日銀の資産残高、官製相場に出口はあるのか?

人生はわくわくとドキドキで、できている! 個人投資家やんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

このところ2万円前後で揉み合っている日経平均ですが、昨秋との比較ではまずまず好調といえます。
年初の株価1万9298.68円との比較では(2017/07/15現在、2万0118.86円)104.2%ですが、昨秋が1万6千円代だったことを考えると20%以上の上昇です。

その裏には株価を支える日銀の爆買いがあり、「官製相場」とも呼ばれています。
果たして日銀に出口はあるのか? わたしたちはどうしたらいいのか?
少し整理してみます。

■ 増え続ける日銀の総資産

日銀が2016年7月に上場投資信託(ETF)の買い入れ額を、それまでの3兆円から年6兆円に拡大してから一年が経ちました。
保有残高は推定17兆円を突破したとか。(2017/6/24日本経済新聞)
日本株保有額ランキングは日本最大の保険会社である日本生命を抜いて、公的年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に続く、2位になったとみられています。

国債の残高も増え続けており、ブルームバーグの集計では国債発行残高のうち日銀の保有割合が40%を突破したようです。
総資産は増え続けています。

世界的にみると、日米欧の中央銀行の資産残高は金額ではほぼ同等ですが、GDP比で見ればECBは40%、FRBは20%に過ぎず、日銀(同約100%)は突出しています。
あちこちで将来を危惧する声が聞かれるようになりました。

2%のインフレを目標として貨幣供給量を増やし、経済を活性化(良いインフレ)する目論見でしたが、一向に成果は上がっていません。

株式や国債を購入するすることで、株価支え、通貨供給、低金利誘導、金融活性化を狙いましたが、株価支えにはなっているものの通貨は市場で循環していません。

この金融緩和の背景を考えると、経済へのカンフル剤以外に政府の財政の健全化とセットで考える必要があると思います。
経済を活性化し良いインフレが起きれば、政府の債務が圧縮されるのです。

■ プライマリーバランスのウソ

約1400兆円にも膨れ上がっている政府債務(GDP比 約280%)に対し、財政の健全化目標として、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成するとしています。

基礎的財政収支とは、政府会計において債務に関する元利払い以外の経費と税収などの収入のバランスのことです。2002年に小泉内閣において財政目標として導入されましたが、よく考えるとこの言葉自体が噴飯ものです。

基礎的財政収支の黒字とは、借金の返済を含めた黒字のことではありません。
本来なら財政収支の黒字化と言えばいいところを、それは難しいということで債務の返済分をカウントしない「基礎的」財政収支という言葉をひねり出しました。

単に収入と経費支出だけに問題を矮小化しているのです。これは、収入以下に経費を抑えましょうと言っているだけで、借金を返していきましょうとは言っていません。

600万円の年収の人が、既にあるローンの返済額300万円は置いといて、生活費を取りあえず600万以下に抑えましょうと言っているようなものです。債権者が聞いたら怒るどころか、呆れるでしょう。

これは政府がよくやる言葉のごまかしで、珍しいことではありません。
口当たりの良い言葉に置き換えることで、あたかも目的に向かって進んでいるような錯覚を狙っています。そもそもこの言葉を使い始めた時点で、借金を返す気があるのか怪しいものです。

当初、この言葉が使われた時は2011年を達成年としていましたが、遅れに遅れ今は2020年が目標です。
しかも、もはや目標が達成できそうもないので、他の目標指標に取り換えてはどうかという議論が官邸周辺や自民党内で出始めている始末です。

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■ 日銀に出口はあるか?

これが家計ならとっくに破綻しているでしょうが、政府会計を家計に例えるのも間違いです。

新社会人に知って欲しい、不都合な真実 でも書きましたが、政府には家計と異なる3つの要素があります。

1)徴税権がある     →収入を自分で増やすことが可能
2)貨幣印刷権がある   →日銀を使って通貨を増やす(本来は禁じ手)
3)借金の相手を制御する→日銀やゆうちょ銀を使って借金する

家計とは異なる色々な方策があることはあるのです。
異次元の金融緩和は、2)、3)を実行していることに他なりません。

といってインフレ誘導できたとしても債務圧縮は簡単ではありません。
3%のインフレ率で債務の1400兆円が今のGDP500兆円と等価になるには約37年を必要とします。
しかも、これでやっと債務がGDP比1.0倍に減るだけです。(実体経済を不変とした複利計算)

国債の新規発行を停止すれば(新たな借金をしない)もっと現実的な数字になりますが、政府予算は緊縮どころか膨らみ続けています。

国債がデフォルトにならない根拠として、日本の政府には莫大な資産があるといった主張も耳にします。
これは事実ですが、政府の資産は簡単に売却はできません。社会インフラが維持できなくなります。(多少は売却できるでしょうが)

日本において、過去の国債デフォルトは近代では終戦直後の1946年に行われた新円切替ぐらいで、今はとても出来ることではありません。

財政再建もできない、デフォルトもできないとなると残る手は何でしょうか?

■ 狙われるわたし達の財産

家計に1800兆円の資産があるから日本は大丈夫という意見があります。
これは国民の資産を国の借金の返済に充てるという論法でとんでもない暴論ですが、これは密かに狙っている可能性大です。

2015年からの相続税の基礎控除の見直しや、先送りされている消費税率のアップはその一つでしょう。
富裕層への海外送金も厳しくなっています。
最後の宝刀、1)の徴税権(増税)を使いながら緩やかなるインフレを待つという作戦しかありません。

わたしは財政健全化のために増税は仕方がないと考えていますが、国民に痛みの伴う政策の実施は簡単ではありません。政策に掲げた瞬間、選挙に負けてしまいます。

消費税率引き上げを断行した野田元総理は、未だに民進党内で戦犯呼ばわりされています。
国民と議論を尽くし、痛みを伴う改革を推進するリーダーがいなければ問題は先送りされるだけです。

選挙にも負けたくないとなれば、もはや借金は返さないという選択肢しか無いのではないでしょうか?
未来永劫、返さなければ問題は顕在化しないわけです。100年でも債務を放置しておけばいいのです。そのうち貨幣価値は落ちてゆくでしょうから…。

異次元の金融緩和という2)の禁じ手(打ち出の小槌)を使った以上、もう止められないと思います。子孫へ借金を先送りするという最低の政策ですが、それ以外に取りうる現実解は無いのではないでしょうか?

問題は、海外からの日本の金融市場への評価がどうなるか…?
海外の資金が引き上げられる事態が起きうるかどうか…?

わたし達は自分の身は自分で守るしかないのですが、具体的に出来ることはなんでしょうか?

不動産などの実物資産や外貨建て資産の比率を上げておくしかないようです。海外へ移住することも出来ませんし、給与を外貨でもらえるわけでもありません。

わたしも、そろそろ自分のポートフォリオを見直し、外貨比率を上げることにします。(為替リスクはありますが)

まずは、日銀の黒田総裁の任期が切れる2018年4月が要注意かもしれません。
米ドルがいいか、香港ドルかユーロか…。思い切ってインドルピーがいいのか、悩ましい日々になりそうです。

あなたも日本に偏った資産配分を見直してみては?
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。

管理人プロフィール

やんつ写真

やんつ(山本 常勝)

合同会社モンテリーブロ 代表
資産形成、資産運用専門FP
Webディレクター

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