リターンをケーススタディで考える 不動産投資の誰も言わない真実(11)

Oct 31, 2019

人生はわくわくとドキドキで、できている! サラリーマン上がりの運用相談専門FPやんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

「誤解と錯覚」に満ちた不動産投資のホントを語る「不動産投資の誰も言わない真実シリーズ」も11回目。今回のお相手は、悩める30代バリキャリ女子Sさんです。

Sさん:
「実家に住んでて生活費にゆとりがあるので今のうちに貯金をと思って、都内の区分マンションを買ったんです。CFは少ないでんすが、低金利時代にこんなものかと思って満足してたんですけど…」
「でも勉強を始めたら、周りの投資家の方で区分マンションをやってる方がほとんどいなくて…。それで、これでいいのか心配になって。」

そうなんですね。じゃあ、シミュレーションで色々チェックしてみましょう。

■ ケーススタディ(3)区分マンション

区分マンション_概要
物件概要と購入条件は次の通りですね。
・物件価格 1930万円(土地730万円、建物1200万円)
・構造 RCマンション、新築
・自己資金 30万円(除諸経費)
・借入金額 約1900万円
・借入期間 30年
・借入金利 2.0%

ほぼフルローンとは凄いですね。金利も高いという程ではないですし。土地と建物の内訳は不明ですが、ざっくりこの按分にしておきましょう。

リーシングは
・間取り 1K(20.2㎡)
・月額家賃 @9.3万円
・マ特経 :0.984万円/月
・管理費 :0.324万円/月
年間経費計:15.7万円((0.984+0.324)×12)
なんですね。

場所は本郷三丁目ですか。御茶ノ水駅も使える良い所ですね。路線価はさすがの60万円!
表面利回りは5.78%(9.3×12÷1930)。都内の新築物件としては上出来かもしれません。

Sさん:
「場所もいいので将来的にも空室の心配は無いかと思ったんです。」

マンション特有の経費が10.6%(9840÷93000)ですね。
区分マンションは一般的に経費率が高くなりがちなんですが、新築のためか管理費などが低く設定されているようで、経費合計はそれほどでもありませんね。

年間収支もみてみましょう。

区分マンション_年間収支
年間収支
・返済比率 75.5%
・年間CF 約5.1万円
・CF率 0.27%(対物件価格)
・CCR 3.9%(5.1÷自己資金130)

CF率が0.27%ですか…。年間5万円とは少ないですね。
返済比率は75.5%かあ。

Sさん:
「………駄目ですか? CFは少ないんですが、ローン返済後には家賃が丸々収入になるので貯金としては良いのかなと…。」

駄目ではありませんが、投資目的が何かです。
それに返済比率が高いと、運営状況によって将来キャッシュアウトする可能性もあります。

《出口計算》のパートを見てみましょう。
区分マンション_出口計算

10年後の家賃下落は10%くらいみておいた方がいいでしょう。
空室率は0%でいいとして、家賃は83700円ですね。

10年後は中古なので期待収益率を6.5%とすると、売価想定は約1542万円。
ローン残高がまだ1390万円くらいあるので、キャピタルは約157万円です。

10年間のインカムゲインを約51万円とすると投資総収益は約208万円(157+51)。資産増加倍率は1.6倍(208÷130)ですね。

Sさん:
「10年で1.6倍なら良い投資じゃないでしょうか? 築古戸建てとも遜色ないような。」

固定資産税が新築の軽減措置で安くなっていますので、5年目以降はもう少し高くなり、実際にはCFが減少します。それに戸建てと違い、退去も出やすいのでリフォーム代もかかります。

なので実際のインカムは51万円ではなく、ほとんど無いと思った方がいいです。
キャピタルの方も諸経費が含まれていませんし。

Sさん:
「………………。」

ローン完済後も見てみましょう

30年後の家賃下落は都内とはいえ20%くらいみておいた方がいいでしょう。
空室率も5%を見込みましょう。家賃は70680円ですね。

30年後は立派な築古なので、期待収益率を8.0%とすると、売価想定額は約1060万円です。

つまりSさんが1930万円と思って買った物件は、30年後の完全取得時は1060万円の価値の不動産ということになります。

この数字は知っておいてください。
30年掛けて1000万円程度の資産を築く投資、ということです。
長期間のローンリスクの対価がこれです。

もし、10年後の市況が悪く期待収益率が7%しか見込めなければ売価想定は1435万。ローン残高が1390万なのでキャピタルは45万円。
売買諸経費もかかりますし、インカムも見込めないとなると投入自己資金も回収できない計算になります。

こういった物件はローン期間が長いため残債の減りが遅く、取得後5~10年は債務超過で売れないということがよく起こります。
売ると赤字になり、却って損をするんです。

区分所有の特徴をまとめると

《デメリット》
・利回りが低い ⇒供給が少なく需要が多く、プレミア価格になっている
・経費率が高い ⇒マンション特別経費が約10%~

《メリット》
・流動性が高い ⇒何時でも処分(現金化)ができる
・価値下落が少ない⇒供給が少ないため価値が下がりにくい
・空室リスクが低い

このシリーズの2回目「あわてて物件を探す前にするべきこと」で説明しているんですが、この物件は、資産形成の三段階(資産形成期、品質改善期、資産維持期)のうち資産維持期向きなんですよね。

安いものを買えば流動性の高さが生きるんですが。

Sさん:
「どうしたらいいんですか? まだ3年しか経っていないんです。」

うーん。考え方は三つかなあ。

①投入資金割れを覚悟で損切りする
②市況を見ながら損失にならないタイミングで売却する
③保有し続けて、他のCFの出る物件で補填する

ちょっと厳しい現実になったかもしれません。
資産を増やすつもりで資産が増えにくい物件を買ったんですね。
まだお若いですし、勉強と思って次に行きましょう。

Sさん:
「甘かったです…。一から勉強し直します。これからどうするかゆっくり考えます。」

破綻したわけでもありませんし、元気を出してください。
これから取り返すチャンスは幾らでもありますよ。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回で本シリーズを最後にしたいと思います。

トータルリターンをケーススタディで考える 不動産投資の誰も言わない真実(10)

Aug 29, 2019

人生はわくわくとドキドキで、できている! サラリーマン上がりの運用相談専門FPやんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

「誤解と錯覚」に満ちた不動産投資のホントを語る「不動産投資の誰も言わない真実シリーズ」も早や10回目。お相手は引き続き30代男性Hさんです。

Hさん:
前回は、表面利回り18%の築古戸建てが売却額によっては積立投資と変わらないと分かり、ショックでした。10年後や出口などを考えないと、正しいリターンは掴めないんですね。」

築古戸建てはローンというレバレッジが掛かってない分、ややリターンが少ないんですよ。でも自己資金が少なくて済むとか安定的だとか、色々メリットもありますからね。
要はそれぞれの特徴を理解しましょう、ということです。

Hさん:
「今回は中古アパートの試算ということで、どんな数字になるかドキドキです。」

では早速、物件評価の6パートシミュレーションを使って計算してみましょう。

■ ケーススタディ(2)中古アパート

中古アパート_販売条件

物件概要と販売条件は次の通りです。
・物件価格 5000万円(土地4000万円、建物1000万円)
・構造 木造アパート、築22年
・自己資金 750万円
・借入金額 約4530万円
・借入期間 20年
・借入金利 1.4%

リーシング計画は
・間取り 1K×8戸(20㎡)
・月額家賃 @4.35万円(計34.8万円)です。

場所は東京近郊で、駅からは少し距離があります。路線価は92000円。そのため家賃は安めで、43500円で見ています。築22年で減価償却も切れたので、そろそろ所有者が手放したくなったという状況でしょうか。

表面利回りは8.35%(34.8×12÷5000)ですね。

Hさん:
「よくあるケースですね。表面利回り8%越えなら、ローンが組めれば買ってもよさそうです。」

さあ、年間収支をみてみましょう。

中古アパート_年間収支
年間収支
・返済比率 62.2%
・年間CF 約89万円
・CF率 1.78%(対物件価格)
・CCR 11.9%(89÷自己資金750)

CF率はローン有りの場合、2.0~%が目標ですが1.78%なら許容範囲でしょう。
返済比率は約62%で、やや高い感じです(目標50%以下)。これは借入期間が20年とやや短いことも関係しています。金利ももう少し低い所を探せるかもしれません。

ただ借入期間を伸ばすと、その分ローン残債の減り方が緩やかになるので売却益が出にくくなります。年度CFとはトレードオフですね。

注意点は償却残年数が4年と極端に短いこと。中古なのでしようがないですがローンも組みにくく、5年目から減価償却費が無くなり所得税が大きくなります。
長期的なCFの推移を事前に計算しておくと、慌てなくて済みますよ。

前回の築古戸建てでは、自己資金690万円でCCR10.2%でした。
ローンのレバレッジが掛かっていますのでCF率は良いですが、大きな差ではありません。

木造ではなくRCの場合は耐用年数が長い場合、ローン期間も長く取れますのでローンも組み易く更にレバレッジが大きくなります。

《出口計算》のパートを見てみましょう。

中古アパート_出口計算

10年後の家賃下落率を10%、空室率を10%としています。
実家賃収入は年額338万2560円(348千円×0.9×0.9×12か月)です。

ここで期待収益率10.36%で売却できたとすると、売価は約3260万円です。(338÷0.1036)
キャピタルゲインはここからローン残高2420万円を引いて約840万円(別途諸経費有り)
インカムゲインは約890万円(かなり甘めの試算、89×10)
投資総収益は約1730万円(840+890)です。

資産増加倍率は2.3倍(1730÷750)となり、築古戸建ての倍率が約1.6~1.8倍だったのと比べるとローンの効果で効率がいいことが分かります。

更に、期待収益率8.5%でも試算してみましょう。ば売却額は約3980万円になります。(338÷0.085)

キャピタルゲインは約1560万円(別途諸経費有り)になり、
インカムゲインは変わらず約890万円(かなり甘めの試算)なので
投資総収益は約2450万円(1560+890)です。

資産増加倍率はなんと3.3倍(2450÷750)になります。
期待収益率の2%の違いで大きく差が付くことが分かります。つまり市況の良い、高く売れる時の売却が重要ということです。

Hさん:
「なるほど、市況を見た売却が効率的なんですね。持ち続けることしか考えてませんでした。」

無論、持ち続ける選択肢もありますが、こういったことを知ったうえで、比較することが重要です。

このシミュレーションで、ぜひローン完済時なども確認してください。
ローンのレバレッジ効果は現金買いの4~5倍というのがわたしの持論です。特に売却時にレバレッジが物を言ってきます。無論、ローンリスクを伴いますので無条件ではありませんが、この差は大きいです。

中古アパートだけではなく、新築も色々試算すると新しい気付きがありますよ。

まとめると
・中古アパートはローンが組めるかがポイント
・場所によっては家賃下落、空室リスクは高い(満室状態で売り抜ける)
・新築アパートはローンが長く組めるのでCFは出やすいが、元本返済が遅いのでキャピタルは少なくなる。市況が悪いと価格下落が大きい
・ローンのレバレッジで売却時の大きなリターンが可能
・購入後の満室経営が肝
といったところでしょうか。

Hさん:
「ありがとうございました。それぞれの特性を理解して頑張ります」

賃貸併用に続き一般物件も頑張ってください。応援してますよ。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回は別の方からのご質問になります。

トータルリターンをケーススタディで考える 不動産投資の誰も言わない真実(9)

Jul 31, 2019

人生はわくわくとドキドキで、できている! サラリーマン上がりの運用相談専門FPやんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

「誤解と錯覚」に満ちた不動産投資のホントを語る「不動産投資の誰も言わない真実シリーズ」の第九回。お相手は前回に続き30代男性Hさんです。

Hさん:
前回は賃貸業のインカム収支カーブが目からウロコで…。不動産は長期で考えないと、本当の姿が見えてこないんですね。」

そうなんです。しかも最初が一番利益率が高いという特性があるため、そのままずっと儲かると勘違いしてしまうんです。

Hさん:
「今回はトータルリターンの考え方をケーススタディで説明いただけるとのことで、楽しみです。」

物件評価の6パートシミュレーションに出口計算パートがありますので、これを使いながら説明していきますね。
まずは、ローンを組まない購入が可能で最近人気の築古戸建てです。

■ ケーススタディ(1)築古戸建て

築古戸建て_販売条件

物件概要と販売条件は次の通りです。
・構造 木造、築40年(3LDK)
・物件価格 500万円(土地450万円、建物50万円)
・リフォーム費用 150万円(見込み値)
・自己資金 690万円(含諸経費40万円)
・ローン無し

リーシング計画としては
・月額家賃 7.5万円(年90万円) が見込めるとします。

表面利回り18.0%(90÷500)で、悪くはない物件ですね。リフォーム費用を入れても利回り13.8%です。
次に年間収支をみてみましょう。

築古戸建て_年間収支
・年間CF 約70万円
・CF率 14.1%(対物件価格)
・CCR 10.2%
・返済比率 ローン無し

Hさん:
「年間70万円の安定収入だと、結構いいんじゃないですか?」

CF率はローンが無い場合は評価指標としては適さないので、この場合はCCRを中心に見ます。
CCRとはCash On Cash Returnで、年間CF÷自己資金で計算します。自己資金の回収率、投資の収益性ということですね。

目標としては20%程度ですが、10%でも悪いという程ではありません。ただリフォーム費用を投下しているため、表面利回りに比べCCRが低くなるのは否めません。回収に10年掛かってしまうのは理解しておいたほうがいいですね。

戸建ては入居付けに苦労することもありますが、入居後は手間がかからないのがなんといっても魅力です。退去も起こりにくく、安定収益が見込めます。

トータルリターンとして《出口計算パート》を見てみましょう。

築古戸建て_出口計算

10年後想定ですが、
・家賃下落率10%、空室率0%
と仮定しています。

仮に売却するとして、購入時よりやや値下がりしたとして期待収益率を20.0%とすると、売価は405万円です。

キャピタルゲイン 405万円(別途諸経費有り)
インカムゲイン 約704万円(かなり甘めの試算)
計 約1110万円 になります。

ここで資産増加倍率をみると約1.6倍(1110÷690)です。つまり当初の資金690万円が10年で約1.6倍になる訳です。

定期預金に比べれば十分なリターンに思えますが、対比としてインデックスの積立投資では、約4.5%の利回りで10年で約1.5倍になります。つまり投資としては、約4.5%の利回りとほぼ等価ということです。

この数字を見ると、物件探しやリフォームの苦労を考えると、それ程割のいい投資でもないことが分かります。
誰にでもでき、ほったらかしが可能なインデックスの積立投資と苦労の割にはリターンが変わらない訳ですから。

Hさん:
「えっ、そうなんですか!? 表面利回り18%で、とても良い投資に思えたんですが…。10年後で評価するとそれ程でもないんですね。利回り4.5%かあ。」

それが出口を考えることの重要性なんです。購入直後だけではなく、長期的なトータルリターンで考えるんです。

ただ、出口の条件が変われば結果も変わってきます。

もしオーナーチェンジであることの利点やリフォーム済みであることで、期待収益率が15.0%で売却できたとしましょう。
図は付けませんが、ぜひご自分で後で確認してくださいね。

この場合、売価は540万円(90÷0.15)です。

キャピタルゲインが540万円に増え(別途諸経費有り)、インカムゲインは約700万円と変わらないので(かなり甘めの試算)
計 約1240万円 になります。

結果、資産増加倍率は1.8倍(1240÷690)となり、1年利回りに直すと6%程度です。これなら積立てに比べて優位性があると言えます。

Hさん:
「つまり410万円で売れると利回り4.5%で、540万円で売れると利回り6.0%ということですね。いかに高く売るか、高く売れる時期に売るかが大事なんですね。」
「やんつさんが、市況の良い時に売却することがトータルリターンを最大化するコツ、というのがようやく分かってきました。」

ありがとうございます。

築古戸建てをまとめると
 ・金額が手頃で、ローン無しでも取り組みが可能
 ・リフォーム費用のコストダウンが必須
 ・リターンはリフォーム費用と売却額次第。レバレッジが掛かっていない分、高値売却が出来なければ大きなリターンを生みにくい
 ・入居付けに苦労はするが、入居後は安定的
といったところでしょうか。

物件評価の6パートは、こうやって数字を色々変えながら入力してみることで、様々な気付きが生まれるんですよ。ぜひ使ってみてください。

次回はケーススタディとして、最もポピュラーな中古アパートを取りあげますね。
今回の築古戸建てと比較してみてください。

Hさん:
「ありがとうございます!」

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回もケーススタディです。

管理人プロフィール

やんつ写真

やんつ(山本 常勝)

合同会社モンテリーブロ 代表
資産形成、資産運用専門FP
Webディレクター

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