トータルリターンをケーススタディで考える 不動産投資の誰も言わない真実(10)

Aug 29, 2019

人生はわくわくとドキドキで、できている! サラリーマン上がりの運用相談専門FPやんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

「誤解と錯覚」に満ちた不動産投資のホントを語る「不動産投資の誰も言わない真実シリーズ」も早や10回目。お相手は引き続き30代男性Hさんです。

Hさん:
前回は、表面利回り18%の築古戸建てが売却額によっては積立投資と変わらないと分かり、ショックでした。10年後や出口などを考えないと、正しいリターンは掴めないんですね。」

築古戸建てはローンというレバレッジが掛かってない分、ややリターンが少ないんですよ。でも自己資金が少なくて済むとか安定的だとか、色々メリットもありますからね。
要はそれぞれの特徴を理解しましょう、ということです。

Hさん:
「今回は中古アパートの試算ということで、どんな数字になるかドキドキです。」

では早速、物件評価の6パートシミュレーションを使って計算してみましょう。

■ ケーススタディ(2)中古アパート

中古アパート_販売条件

物件概要と販売条件は次の通りです。
・物件価格 5000万円(土地4000万円、建物1000万円)
・構造 木造アパート、築22年
・自己資金 750万円
・借入金額 約4530万円
・借入期間 20年
・借入金利 1.4%

リーシング計画は
・間取り 1K×8戸(20㎡)
・月額家賃 @4.35万円(計34.8万円)です。

場所は東京近郊で、駅からは少し距離があります。路線価は92000円。そのため家賃は安めで、43500円で見ています。築22年で減価償却も切れたので、そろそろ所有者が手放したくなったという状況でしょうか。

表面利回りは8.35%(34.8×12÷5000)ですね。

Hさん:
「よくあるケースですね。表面利回り8%越えなら、ローンが組めれば買ってもよさそうです。」

さあ、年間収支をみてみましょう。

中古アパート_年間収支
年間収支
・返済比率 62.2%
・年間CF 約89万円
・CF率 1.78%(対物件価格)
・CCR 11.9%(89÷自己資金750)

CF率はローン有りの場合、2.0~%が目標ですが1.78%なら許容範囲でしょう。
返済比率は約62%で、やや高い感じです(目標50%以下)。これは借入期間が20年とやや短いことも関係しています。金利ももう少し低い所を探せるかもしれません。

ただ借入期間を伸ばすと、その分ローン残債の減り方が緩やかになるので売却益が出にくくなります。年度CFとはトレードオフですね。

注意点は償却残年数が4年と極端に短いこと。中古なのでしようがないですがローンも組みにくく、5年目から減価償却費が無くなり所得税が大きくなります。
長期的なCFの推移を事前に計算しておくと、慌てなくて済みますよ。

前回の築古戸建てでは、自己資金690万円でCCR10.2%でした。
ローンのレバレッジが掛かっていますのでCF率は良いですが、大きな差ではありません。

木造ではなくRCの場合は耐用年数が長い場合、ローン期間も長く取れますのでローンも組み易く更にレバレッジが大きくなります。

《出口計算》のパートを見てみましょう。

中古アパート_出口計算

10年後の家賃下落率を10%、空室率を10%としています。
実家賃収入は年額338万2560円(348千円×0.9×0.9×12か月)です。

ここで期待収益率10.36%で売却できたとすると、売価は約3260万円です。(338÷0.1036)
キャピタルゲインはここからローン残高2420万円を引いて約840万円(別途諸経費有り)
インカムゲインは約890万円(かなり甘めの試算、89×10)
投資総収益は約1730万円(840+890)です。

資産増加倍率は2.3倍(1730÷750)となり、築古戸建ての倍率が約1.6~1.8倍だったのと比べるとローンの効果で効率がいいことが分かります。

更に、期待収益率8.5%でも試算してみましょう。ば売却額は約3980万円になります。(338÷0.085)

キャピタルゲインは約1560万円(別途諸経費有り)になり、
インカムゲインは変わらず約890万円(かなり甘めの試算)なので
投資総収益は約2450万円(1560+890)です。

資産増加倍率はなんと3.3倍(2450÷750)になります。
期待収益率の2%の違いで大きく差が付くことが分かります。つまり市況の良い、高く売れる時の売却が重要ということです。

Hさん:
「なるほど、市況を見た売却が効率的なんですね。持ち続けることしか考えてませんでした。」

無論、持ち続ける選択肢もありますが、こういったことを知ったうえで、比較することが重要です。

このシミュレーションで、ぜひローン完済時なども確認してください。
ローンのレバレッジ効果は現金買いの4~5倍というのがわたしの持論です。特に売却時にレバレッジが物を言ってきます。無論、ローンリスクを伴いますので無条件ではありませんが、この差は大きいです。

中古アパートだけではなく、新築も色々試算すると新しい気付きがありますよ。

まとめると
・中古アパートはローンが組めるかがポイント
・場所によっては家賃下落、空室リスクは高い(満室状態で売り抜ける)
・新築アパートはローンが長く組めるのでCFは出やすいが、元本返済が遅いのでキャピタルは少なくなる。市況が悪いと価格下落が大きい
・ローンのレバレッジで売却時の大きなリターンが可能
・購入後の満室経営が肝
といったところでしょうか。

Hさん:
「ありがとうございました。それぞれの特性を理解して頑張ります」

賃貸併用に続き一般物件も頑張ってください。応援してますよ。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回は別の方からのご質問になります。

トータルリターンをケーススタディで考える 不動産投資の誰も言わない真実(9)

Jul 31, 2019

人生はわくわくとドキドキで、できている! サラリーマン上がりの運用相談専門FPやんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

「誤解と錯覚」に満ちた不動産投資のホントを語る「不動産投資の誰も言わない真実シリーズ」の第九回。お相手は前回に続き30代男性Hさんです。

Hさん:
前回は賃貸業のインカム収支カーブが目からウロコで…。不動産は長期で考えないと、本当の姿が見えてこないんですね。」

そうなんです。しかも最初が一番利益率が高いという特性があるため、そのままずっと儲かると勘違いしてしまうんです。

Hさん:
「今回はトータルリターンの考え方をケーススタディで説明いただけるとのことで、楽しみです。」

物件評価の6パートシミュレーションに出口計算パートがありますので、これを使いながら説明していきますね。
まずは、ローンを組まない購入が可能で最近人気の築古戸建てです。

■ ケーススタディ(1)築古戸建て

築古戸建て_販売条件

物件概要と販売条件は次の通りです。
・構造 木造、築40年(3LDK)
・物件価格 500万円(土地450万円、建物50万円)
・リフォーム費用 150万円(見込み値)
・自己資金 690万円(含諸経費40万円)
・ローン無し

リーシング計画としては
・月額家賃 7.5万円(年90万円) が見込めるとします。

表面利回り18.0%(90÷500)で、悪くはない物件ですね。リフォーム費用を入れても利回り13.8%です。
次に年間収支をみてみましょう。

築古戸建て_年間収支
・年間CF 約70万円
・CF率 14.1%(対物件価格)
・CCR 10.2%
・返済比率 ローン無し

Hさん:
「年間70万円の安定収入だと、結構いいんじゃないですか?」

CF率はローンが無い場合は評価指標としては適さないので、この場合はCCRを中心に見ます。
CCRとはCash On Cash Returnで、年間CF÷自己資金で計算します。自己資金の回収率、投資の収益性ということですね。

目標としては20%程度ですが、10%でも悪いという程ではありません。ただリフォーム費用を投下しているため、表面利回りに比べCCRが低くなるのは否めません。回収に10年掛かってしまうのは理解しておいたほうがいいですね。

戸建ては入居付けに苦労することもありますが、入居後は手間がかからないのがなんといっても魅力です。退去も起こりにくく、安定収益が見込めます。

トータルリターンとして《出口計算パート》を見てみましょう。

築古戸建て_出口計算

10年後想定ですが、
・家賃下落率10%、空室率0%
と仮定しています。

仮に売却するとして、購入時よりやや値下がりしたとして期待収益率を20.0%とすると、売価は405万円です。

キャピタルゲイン 405万円(別途諸経費有り)
インカムゲイン 約704万円(かなり甘めの試算)
計 約1110万円 になります。

ここで資産増加倍率をみると約1.6倍(1110÷690)です。つまり当初の資金690万円が10年で約1.6倍になる訳です。

定期預金に比べれば十分なリターンに思えますが、対比としてインデックスの積立投資では、約4.5%の利回りで10年で約1.5倍になります。つまり投資としては、約4.5%の利回りとほぼ等価ということです。

この数字を見ると、物件探しやリフォームの苦労を考えると、それ程割のいい投資でもないことが分かります。
誰にでもでき、ほったらかしが可能なインデックスの積立投資と苦労の割にはリターンが変わらない訳ですから。

Hさん:
「えっ、そうなんですか!? 表面利回り18%で、とても良い投資に思えたんですが…。10年後で評価するとそれ程でもないんですね。利回り4.5%かあ。」

それが出口を考えることの重要性なんです。購入直後だけではなく、長期的なトータルリターンで考えるんです。

ただ、出口の条件が変われば結果も変わってきます。

もしオーナーチェンジであることの利点やリフォーム済みであることで、期待収益率が15.0%で売却できたとしましょう。
図は付けませんが、ぜひご自分で後で確認してくださいね。

この場合、売価は540万円(90÷0.15)です。

キャピタルゲインが540万円に増え(別途諸経費有り)、インカムゲインは約700万円と変わらないので(かなり甘めの試算)
計 約1240万円 になります。

結果、資産増加倍率は1.8倍(1240÷690)となり、1年利回りに直すと6%程度です。これなら積立てに比べて優位性があると言えます。

Hさん:
「つまり410万円で売れると利回り4.5%で、540万円で売れると利回り6.0%ということですね。いかに高く売るか、高く売れる時期に売るかが大事なんですね。」
「やんつさんが、市況の良い時に売却することがトータルリターンを最大化するコツ、というのがようやく分かってきました。」

ありがとうございます。

築古戸建てをまとめると
 ・金額が手頃で、ローン無しでも取り組みが可能
 ・リフォーム費用のコストダウンが必須
 ・リターンはリフォーム費用と売却額次第。レバレッジが掛かっていない分、高値売却が出来なければ大きなリターンを生みにくい
 ・入居付けに苦労はするが、入居後は安定的
といったところでしょうか。

物件評価の6パートは、こうやって数字を色々変えながら入力してみることで、様々な気付きが生まれるんですよ。ぜひ使ってみてください。

次回はケーススタディとして、最もポピュラーな中古アパートを取りあげますね。
今回の築古戸建てと比較してみてください。

Hさん:
「ありがとうございます!」

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回もケーススタディです。

投資はトータルリターンを忘れるな 不動産投資の誰も言わない真実(8)

Jun 30, 2019

人生はわくわくとドキドキで、できている! サラリーマン上がりの運用相談専門FP やんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

「誤解と錯覚」に満ちた不動産投資のホントを語る「不動産投資の誰も言わない真実シリーズ」第八回。前回に続き、賃貸併用住宅を取得されたばかりの30代男性Hさんの登場です。

Hさん:
「前回は出口の話が聞けて参考になりました。今回は、その続きということで楽しみにしてます。」

前回はインカムしか語られない業界の不思議と、売却のタイミングの話でしたね。今回は出口の重要性を理解するために、トータルリターンの話をさせてください。

まず、賃貸業は売上逓減、コスト逓増のビジネスだということを思い出してください。
つまり物件購入後、時間と共に売上は減っていき、コストは増えていくということです。
建物の老朽化と共に家賃は下がり、空室率は上がっていきます。そして、修繕費は増えていくわけです。

これを見てください。

■賃貸業のインカム収支カーブ

賃貸業インカム収支カーブ

これは「ほったらかし投資術の甘い罠」で取り上げた、区分マンションを買った時の毎年のCFと累積のCFを時系列に30年分プロットしたものです。実際に販売されているもので試算してみました。

販売条件
 ・物件価格 2130万円
 ・借入金額 1900万円
 ・借入期間 30年
 ・借入金利 2.0%
 ・家賃 9.3万円(表面利回り5.2%)
 ・管理費等 1.3万円(修繕積立含む)

その他の条件
 ・家賃下落 30年後85%(都内なので下落は少な目)
 ・退去による修繕 5回
 ・設備故障 2回

青線が単年度のCFで、赤線が累計のCFです。
約10年単位で大きく変化していくことが分かると思います。

・Ⅰ期→修繕も無く、順調にCFが積み上がる時期
・Ⅱ期→修繕費の発生に連動して利益が上下する時期(修繕発生時にはキャッシュアウトする)
・Ⅲ期→家賃下落と空室の増加によりキャッシュアウトが常態化する時期

これは新築の場合の試算ですが、中古の場合はⅠ期がなくⅡ期、Ⅲ期だけになる訳です。

また中古は、安く購入できるため損益分岐のゼロラインが下がり、累積CFはジグザグしながらもしばらくは上がっていきます。

実際には家賃下落や稼働率低下をここまで放置することはなく、Ⅲ期にはリフォーム等で収益改善を図ります。ただその分、今度は追加資金の回収に時間がかかることになります。

こうして、長期的には修繕費を投下・回収しながら、コツコツとCFを積み上げるのが賃貸業というビジネスだということが分かってもらえると思います。
長期的に均していくと8%程度の利回りに収斂するというのが実際のところです。

Hさん:
「そうなんですか。不動産投資って、もっと利回りの高いものかと思ってました。」

■不動産投資のトータルリターン

(5)で話したようにローンでのレバレッジ使うとか、運営を上手くやるとか色々ありますが、スタート時のCFが一番大きいんです。
ここを皆さん勘違いしています。ずっと儲かり続けると錯覚するんです。

インカムだけをみて語っているのも問題です。
まあ、前回話したように「業界が勘違いさせている」と言ってもいいかもしれませんが。

利回りの高いものは郊外で(空室、流動性の)リスクも高い。
リスクの低い都内は利回りも低く、インカムだけでは資産拡大には向かないんです。
都内物件は価値下落の低さによる資産性に注目した投資になります。

どちらがいいという訳ではなく、狙いが異なるということです。

ここで投資の基本
トータルリターン=インカムゲイン+キャピタルゲイン
を思い出してください。

この図から読み取れる、インカムを最大化しつつキャピタルも最大化する方法はどうなりますか?

Hさん:
「Ⅲ期には累計のCFが下がるから…。うーん??」

この図はインカムだけのプロットです。とすると、インカムが下がる前に市況のいい時に高値で売る! これがトータルリターンを最大化するポイントになります。

つまりCFが積み上がっているうちに、市況の良い時に高く売れば、インカムもキャピタルも取れてトータルが最大化できる訳です。

わたしが、新築を5~10年で売り抜けましょう、といつも話している理由はここにあります。

■売却額の試算(収益還元評価)

ここで、売却時の売値算出に関連する収益還元評価(直接法)について説明しておきますね。

収益還元評価とは不動産の価格を求める手法の一つで、その物件が生み出す利益に着目して価値を算出する方法です。一定期間の純利益から還元利回りで割って求めます。

不動産では純利益を事前に求めることが困難なことから、家賃収入を利回りで割って求めることが多いです。還元利回りには市場の期待収益率(キャップレート)を使います。

例えば
・満室想定家賃 400万円
・期待収益率 8.0%  なら

収益還元評価=400 ÷ 0.08= 5000万円 です。

Hさんの持っているアパートの家賃収入が400万円/年だとしたら、8%の利回りで売れる場合、その価値は5000万円だということです。

ただ、この期待収益率は市況や立地、老朽度合等によっても変化します。
アパートの立地が悪く、市況も悪くて10%利回りでしか売れない時は、
収益還元評価=400 ÷ 0.10= 4000万円 にしかなりません。

この差が大きいので、保有し続ける場合でも、絶えず自身の物件の評価をしましょう、と言ってます。

Hさん:
「なるほど、この金額とインカムのトータルを意識するということですね! 全然、考えてませんでした…。」

これは収益還元評価の直接法という計算法ですが、もう一つDCF法というのもあります。

これはもう少し厳密で、将来得られる利益と売却益を合計して、さらに割引現在価値を算出するものです。

投資前に物件の割安度を算出する時に使います。
ご興味があれば、調べてみてください。

Hさん:
「割引ですか…。なんだか難しそうですね。頑張って勉強してみます。」

次回は、このトータルリターンを考えながらケーススタディでもう少しご説明させていただきますね。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回も出口の話が続きます。

管理人プロフィール

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やんつ(山本 常勝)

合同会社モンテリーブロ 代表
資産形成、資産運用専門FP
Webディレクター

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