年金の繰下げ受給はどれだけお得か? 正しくデータで考える

Dec 30, 2019

人生はわくわくとドキドキで出来ている! サラリーマン上がりの運用相談専門FPやんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

「不動産投資の誰も言わない真実シリーズ」も一段落、これからは金融関係をと思っていた矢先、知人との会話で年金の繰下げが話題に。そこで今回はこのテーマを取り上げます。

現在、老齢年金は65歳支給ですが、最大70歳まで繰下げが可能で、その繰下げ月数に応じて支給額が加算されます。

増額率は、繰下げ月数×0.7%、70歳まで繰下げると最大42%の増額

「42%は大きい。4年で元が取れんじゃん。使わない手はないよ!」とは知人の弁。
(繰下げ総額 100×5年 ÷ 加算年金額 142 =3.52年)

確かに4割以上の増額が一生続くとなると、とってもお得な気がします。 でも本当でしょうか…?

一見なるほど思えることでも、正しくデータで考えてみる必要があります。「ほんまかいな精神」が大事。

色々調べてみました。
まずこの支給額は額面であり、手取り額ではありません。70歳時点の支給額は公的年金等控除はあるものの、課税対象となります。
つまり丸々42%が加算される訳ではないということ。

何より最大の疑問はこの計算では「生存率」が考慮されていません。

ということで、
2015年第22回生命表を使って計算してみました。

■ 65歳支給と70歳支給の比較

生命表に基づく年金受給額試算

生命表に生存数がありますので、65歳を起点として生存率を計算します。
(65歳時点でどちらかを選択するという想定)

年金の支給額に生存率を掛けて実支給額とし、65歳支給と70歳繰下げの支給を比較します。そして、繰下げた場合に、支給額が累計繰下げ額をいつ上回るのかみてみます。

表は男性での試算ですが、85歳時点でようやくプラスに転じるのが分かります。
つまり5年繰下げると元が取れるのは4年後ではなく、20年後(85-65)なんです。
(まあ、あくまで生存率を加味した平均という意味ですが)

実際やってみて愕然としたのは85歳の男性の生存率が50%! ということ…。
ぼんやりと女性よりは短命とは知っていても、この数字を見ると考えさせられるものがあります。

表にはしていませんが、女性の場合は生存率が男性より高いため82歳でプラスに転じます。
85歳の生存率は73%です。男性とはずいぶん違いますね。

■ 繰下げの実際は?

総支給額を見ると男性は7.2%の増加。女性は13.6%の増加です。

総支給額が増加するということは、年金財政側が棄損することを意味します。
では、繰下げで政府の負担は増えるのでしょうか?

実は繰下げ制度は、加算もありますが逆に減少するものもあります。

1)繰下げによる待期期間の加給年金や振替加算
2)在職老齢年金の支給停止部分
3)特別支給の老齢年金

などです。

2)には救済として支給調整などもありますが、そもそも繰下げ申請は老齢基礎年金と老齢厚生年金とで別々に行うこともできます。老齢基礎年期は65受給とし、老齢厚生年金は70歳受給とする。
なんていうことも可能です。 うーーん、ややこしい。

自分で支給額を正しく計算することは結構難しそうです。年金の繰下げを検討する場合は、社会保険庁などで確認することがお勧めですね。

このように複雑な制度の繰下げですが、政府の本当の狙いは別にあると感じます。

繰り下げ期間(待機期間)の雇用創出と納税。 これが本当の狙いだと思います。
繰下げれば、その期間はどこかで働くことになるでしょうから。7.2%や13.6%の支給増加を補って余りあるのではないでしょうか?

無論、働くことは悪いことではありませんし、健康ならば定年無しで働くことがこれからの時代の趨勢でしょう。わたしもFPとして働いています。

この様に正否を判断しにくい繰下げですが、その他にも考慮すべき重要なことがあると感じます。

[1] 高齢になると使わない

2016年厚労省調査で男性72.14歳、女性74.79歳となった健康寿命。
いわばこの年齢までが豊かに楽しく使える期間ではないでしょうか?

これ以降は介護費、医療費が中心で娯楽や交際費、贅沢品には使わなくなります。わたしの周りをみてもこれは実感です。

介護費、医療費が不安という場合もあるでしょうが、介護保険制度や高額療養費制度もあります。それなりの貯蓄があれば過度に恐れる必要はありません。

お金を使わない高齢期に備えるのではなく、むしろ健康寿命の間に楽しい時を過ごすためにお金を使う。こんな考えがあっていいと思うのです。

もう一つは類似の考え方ですが

[2] 繰下げ金額の現在価値での評価

資産運用においては時間や割引という概念はとても重要です。

将来受け取る金額を割引率を使って現在価値に修正するべきでしょう。
つまり、5年間繰下げた額は100×5年の単純な500ではなく、割引率を考えるとその価値はもっと大きいということ。

健康な65歳からもらう500は、健康かどうか定かではない70歳以降の500とは異なります。
割引率が15%なら575に、20%なら600に相当します。
(率は個人や考え方によって異なるでしょうが)

ましてや65~70歳の5年間は貴重な健康寿命内の5年間です。

考慮すべきことの多い年金の繰下げですが、これらを考えていくと必ずしもお得とは限らないというのがわたしの結論。 貰えるものはもらって働きたいなら働く、これがお勧め。

個々人の状況は異なります。
俺は健康だし長生きしそうだから繰下げが得になるはず。答えは人それぞれかもしれません。
あなたはどう考えますか?

繰下げするべきかせざるべきか、それが問題だ…。

どちらにしても、正しくデータに基づき判断したいもの。表面的なメディアの数字に惑わされてはいけません。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回からは資産運用について語っていく予定です。

資産形成のフロー派、ストック派。 あなたはどっち?

Sep 19, 2017

人生はわくわくとドキドキで、できている! 個人投資家やんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

資産形成を目指す場合、大きく2つの考え方があります。
フロー派 :運用収入で年間500万円のキャッシュフロー(手取りのお金)を目指す
ストック派:純資産1億円を貯めることを目指す
何が違うのか、どちらが正しいのか、考えてみました。

フローとストック

400人以上の投資家のみなさんと会ってきましたが、不動産投資を実践される方の多くは資産運用から生み出すキャッシュフロー(手取りのお金)で給与収入以上に稼ぐことを夢見ています。

サラリーマンとして自分が働かなくても、お金が代わりに働いてくれて生活できるレベルということです。(これを経済的自由といいます)

キャッシュフローがいくらになるのかを目安にしています。

やれ、月30万円のキャッシュフローが欲しい。
わたしはゆとりを持って月50万円を目指したい。
いや月100万円を達成して、サラリーマンを卒業してバリ島で夢の生活を…。

ロバートキヨサキさんも言っています。
「一にキャッシュフロー、二にキャッシュフロー、三四が無くて五にキャッシュフロー…。」
わたしも、キャッシュフローの追求が自然なことだと思っていました。

ところが、ある社長さんは
「いや、残りの人生から逆算した純資産(ストック)の蓄積が目標ですよ」

つまりあなたが50才なら、例えば85歳まで35年間で毎年500万円必要とすれば1億7500万円。
年金支給額が7000万円なら、差し引いて1億500万円。これを貯めることを目標にするべきと言うのです。
なるほど、この純資産を達成すれば老後の不安は無くなります。純資産の増加こそが資産形成の目指すべきゴールという主張。株式投資の方には当然かもしれませんが、眼からウロコでした。

不動産投資では、フロー派が全盛です。
家賃収入から経費を除いた手取り収入を目安にしています。給与収入と対比した「代わりの収入」という意味で、分かりやすいのです。

一方、株式投資の方はストック(資産)の残高を指標にしています。
配当というフローもありますが、売却益での資産形成が目的です。売買を繰り返した結果としての金融資産残高を語ります。

ストック(資産)とは貸借対照表(資産・負債・資本)でいう現預金、債権、不動産などの合計です。
そこから負債を引いた正味資産を純資産といいます。(総資産ではなく、純資産で語るのがミソ)

資産家がお金持ちかというと、なかなか難しいものがあります。
特に不動産が関係すると、評価が難しく分かりにくいのです。

キャッシュを生まない自宅は資産か?
売却しにくい田舎の土地は資産か?

つまりキャッシュフローを生まない資産は投資の世界では資産とは言えないのです。
会計上の資産と投資における資産が異なるのです。
(キャッシュフローを生まない資産家を、わたしは「死惨家」と呼んでいます)

不動産の評価が難しいことが不動産投資家でフロー派が多い理由かもしれません。
問題は不動産のフローが漸減すること。長期的には家賃が下がり、空室率は上昇します。
目先の収入だけでは無く、やはり純資産の増加に目を向けるべきですね。

一般的な老後資金の目安は約3000万円です。⇒覚えておきたい老後資金のキモ、3000万円の貯金と4%ルール!
計算上はこれで十分ですが、お金の知恵を伴っていないと、この額では「不安心理」がまだまだ残ります。

病気になったら…
介護が必要になったら…

計算上は安全圏と知っていても、万が一が心配なのです。

給与というフローが無くなった場合、貯金だけでは「取り崩して、無くなってしまう不安」からは逃れられません。これが月次分配型の投資信託が売れる理由です。

ところがお金の知恵を身に付け、3~5%で運用できるスキルがあれば、年間90~150万円の利回り。
運用スキルや稼ぐ力があれば、同じ3000万円の貯金でも不安は無くなります。

資産形成とは、純資産の増加だけではなく、運用スキルの習得も必要ということ。

30~40代なら、まだまだ教育費なども必要で3000万円ではサラリーマン卒業とはいきません。
運用スキルを身に付けながら、1億円程度の「不安心理」が無くなるレベルの残高が必要でしょう。
(これだけ資産形成できる方は必然的にスキルも身に付いています)

整理するとこんな感じでしょうか
老後資金の蓄積を目指す方⇒運用スキルを身に付けながら、3000万円を目標とする
経済的自由を目指す方  ⇒運用スキルを更に磨いて、不安が無くなる程度の純資産を形成する
経済的自由の達成後   ⇒大きな純資産を活かしてキャピタル狙いで更に増やしていく

フロー重視か ストック重視か
あなたはどっち?

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。

増え続ける日銀の資産残高、官製相場に出口はあるのか?

Jul 16, 2017

人生はわくわくとドキドキで、できている! 個人投資家やんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・

このところ2万円前後で揉み合っている日経平均ですが、昨秋との比較ではまずまず好調といえます。
年初の株価1万9298.68円との比較では(2017/07/15現在、2万0118.86円)104.2%ですが、昨秋が1万6千円代だったことを考えると20%以上の上昇です。

その裏には株価を支える日銀の爆買いがあり、「官製相場」とも呼ばれています。
果たして日銀に出口はあるのか? わたしたちはどうしたらいいのか?
少し整理してみます。

■ 増え続ける日銀の総資産

日銀が2016年7月に上場投資信託(ETF)の買い入れ額を、それまでの3兆円から年6兆円に拡大してから一年が経ちました。
保有残高は推定17兆円を突破したとか。(2017/6/24日本経済新聞)
日本株保有額ランキングは日本最大の保険会社である日本生命を抜いて、公的年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に続く、2位になったとみられています。

国債の残高も増え続けており、ブルームバーグの集計では国債発行残高のうち日銀の保有割合が40%を突破したようです。
総資産は増え続けています。

世界的にみると、日米欧の中央銀行の資産残高は金額ではほぼ同等ですが、GDP比で見ればECBは40%、FRBは20%に過ぎず、日銀(同約100%)は突出しています。
あちこちで将来を危惧する声が聞かれるようになりました。

2%のインフレを目標として貨幣供給量を増やし、経済を活性化(良いインフレ)する目論見でしたが、一向に成果は上がっていません。

株式や国債を購入するすることで、株価支え、通貨供給、低金利誘導、金融活性化を狙いましたが、株価支えにはなっているものの通貨は市場で循環していません。

この金融緩和の背景を考えると、経済へのカンフル剤以外に政府の財政の健全化とセットで考える必要があると思います。
経済を活性化し良いインフレが起きれば、政府の債務が圧縮されるのです。

■ プライマリーバランスのウソ

約1400兆円にも膨れ上がっている政府債務(GDP比 約280%)に対し、財政の健全化目標として、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成するとしています。

基礎的財政収支とは、政府会計において債務に関する元利払い以外の経費と税収などの収入のバランスのことです。2002年に小泉内閣において財政目標として導入されましたが、よく考えるとこの言葉自体が噴飯ものです。

基礎的財政収支の黒字とは、借金の返済を含めた黒字のことではありません。
本来なら財政収支の黒字化と言えばいいところを、それは難しいということで債務の返済分をカウントしない「基礎的」財政収支という言葉をひねり出しました。

単に収入と経費支出だけに問題を矮小化しているのです。これは、収入以下に経費を抑えましょうと言っているだけで、借金を返していきましょうとは言っていません。

600万円の年収の人が、既にあるローンの返済額300万円は置いといて、生活費を取りあえず600万以下に抑えましょうと言っているようなものです。債権者が聞いたら怒るどころか、呆れるでしょう。

これは政府がよくやる言葉のごまかしで、珍しいことではありません。
口当たりの良い言葉に置き換えることで、あたかも目的に向かって進んでいるような錯覚を狙っています。そもそもこの言葉を使い始めた時点で、借金を返す気があるのか怪しいものです。

当初、この言葉が使われた時は2011年を達成年としていましたが、遅れに遅れ今は2020年が目標です。
しかも、もはや目標が達成できそうもないので、他の目標指標に取り換えてはどうかという議論が官邸周辺や自民党内で出始めている始末です。

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■ 日銀に出口はあるか?

これが家計ならとっくに破綻しているでしょうが、政府会計を家計に例えるのも間違いです。

新社会人に知って欲しい、不都合な真実 でも書きましたが、政府には家計と異なる3つの要素があります。

1)徴税権がある     →収入を自分で増やすことが可能
2)貨幣印刷権がある   →日銀を使って通貨を増やす(本来は禁じ手)
3)借金の相手を制御する→日銀やゆうちょ銀を使って借金する

家計とは異なる色々な方策があることはあるのです。
異次元の金融緩和は、2)、3)を実行していることに他なりません。

といってインフレ誘導できたとしても債務圧縮は簡単ではありません。
3%のインフレ率で債務の1400兆円が今のGDP500兆円と等価になるには約37年を必要とします。
しかも、これでやっと債務がGDP比1.0倍に減るだけです。(実体経済を不変とした複利計算)

国債の新規発行を停止すれば(新たな借金をしない)もっと現実的な数字になりますが、政府予算は緊縮どころか膨らみ続けています。

国債がデフォルトにならない根拠として、日本の政府には莫大な資産があるといった主張も耳にします。
これは事実ですが、政府の資産は簡単に売却はできません。社会インフラが維持できなくなります。(多少は売却できるでしょうが)

日本において、過去の国債デフォルトは近代では終戦直後の1946年に行われた新円切替ぐらいで、今はとても出来ることではありません。

財政再建もできない、デフォルトもできないとなると残る手は何でしょうか?

■ 狙われるわたし達の財産

家計に1800兆円の資産があるから日本は大丈夫という意見があります。
これは国民の資産を国の借金の返済に充てるという論法でとんでもない暴論ですが、これは密かに狙っている可能性大です。

2015年からの相続税の基礎控除の見直しや、先送りされている消費税率のアップはその一つでしょう。
富裕層への海外送金も厳しくなっています。
最後の宝刀、1)の徴税権(増税)を使いながら緩やかなるインフレを待つという作戦しかありません。

わたしは財政健全化のために増税は仕方がないと考えていますが、国民に痛みの伴う政策の実施は簡単ではありません。政策に掲げた瞬間、選挙に負けてしまいます。

消費税率引き上げを断行した野田元総理は、未だに民進党内で戦犯呼ばわりされています。
国民と議論を尽くし、痛みを伴う改革を推進するリーダーがいなければ問題は先送りされるだけです。

選挙にも負けたくないとなれば、もはや借金は返さないという選択肢しか無いのではないでしょうか?
未来永劫、返さなければ問題は顕在化しないわけです。100年でも債務を放置しておけばいいのです。そのうち貨幣価値は落ちてゆくでしょうから…。

異次元の金融緩和という2)の禁じ手(打ち出の小槌)を使った以上、もう止められないと思います。子孫へ借金を先送りするという最低の政策ですが、それ以外に取りうる現実解は無いのではないでしょうか?

問題は、海外からの日本の金融市場への評価がどうなるか…?
海外の資金が引き上げられる事態が起きうるかどうか…?

わたし達は自分の身は自分で守るしかないのですが、具体的に出来ることはなんでしょうか?

不動産などの実物資産や外貨建て資産の比率を上げておくしかないようです。海外へ移住することも出来ませんし、給与を外貨でもらえるわけでもありません。

わたしも、そろそろ自分のポートフォリオを見直し、外貨比率を上げることにします。(為替リスクはありますが)

まずは、日銀の黒田総裁の任期が切れる2018年4月が要注意かもしれません。
米ドルがいいか、香港ドルかユーロか…。思い切ってインドルピーがいいのか、悩ましい日々になりそうです。

あなたも日本に偏った資産配分を見直してみては?
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。

管理人プロフィール

やんつ写真

やんつ(山本 常勝)

合同会社モンテリーブロ 代表
資産形成、資産運用専門FP
Webディレクター

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