トータルリターンをケーススタディで考える 不動産投資の誰も言わない真実(9)
Jul 31, 2019
人生はわくわくとドキドキで、できている! サラリーマン上がりの運用相談専門FPやんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・
「誤解と錯覚」に満ちた不動産投資のホントを語る「不動産投資の誰も言わない真実シリーズ」の第九回。お相手は前回に続き30代男性Hさんです。
Hさん:
「前回は賃貸業のインカム収支カーブが目からウロコで…。不動産は長期で考えないと、本当の姿が見えてこないんですね。」
そうなんです。しかも最初が一番利益率が高いという特性があるため、そのままずっと儲かると勘違いしてしまうんです。
Hさん:
「今回はトータルリターンの考え方をケーススタディで説明いただけるとのことで、楽しみです。」
物件評価の6パートシミュレーションに出口計算パートがありますので、これを使いながら説明していきますね。
まずは、ローンを組まない購入が可能で最近人気の築古戸建てです。
■ ケーススタディ(1)築古戸建て
物件概要と販売条件は次の通りです。
・構造 木造、築40年(3LDK)
・物件価格 500万円(土地450万円、建物50万円)
・リフォーム費用 150万円(見込み値)
・自己資金 690万円(含諸経費40万円)
・ローン無し
リーシング計画としては
・月額家賃 7.5万円(年90万円) が見込めるとします。
表面利回り18.0%(90÷500)で、悪くはない物件ですね。リフォーム費用を入れても利回り13.8%です。
次に年間収支をみてみましょう。
・年間CF 約70万円
・CF率 14.1%(対物件価格)
・CCR 10.2%
・返済比率 ローン無し
Hさん:
「年間70万円の安定収入だと、結構いいんじゃないですか?」
CF率はローンが無い場合は評価指標としては適さないので、この場合はCCRを中心に見ます。
CCRとはCash On Cash Returnで、年間CF÷自己資金で計算します。自己資金の回収率、投資の収益性ということですね。
目標としては20%程度ですが、10%でも悪いという程ではありません。ただリフォーム費用を投下しているため、表面利回りに比べCCRが低くなるのは否めません。回収に10年掛かってしまうのは理解しておいたほうがいいですね。
戸建ては入居付けに苦労することもありますが、入居後は手間がかからないのがなんといっても魅力です。退去も起こりにくく、安定収益が見込めます。
トータルリターンとして《出口計算パート》を見てみましょう。
10年後想定ですが、
・家賃下落率10%、空室率0%
と仮定しています。
仮に売却するとして、購入時よりやや値下がりしたとして期待収益率を20.0%とすると、売価は405万円です。
キャピタルゲイン 405万円(別途諸経費有り)
インカムゲイン 約704万円(かなり甘めの試算)
計 約1110万円 になります。
ここで資産増加倍率をみると約1.6倍(1110÷690)です。つまり当初の資金690万円が10年で約1.6倍になる訳です。
定期預金に比べれば十分なリターンに思えますが、対比としてインデックスの積立投資では、約4.5%の利回りで10年で約1.5倍になります。つまり投資としては、約4.5%の利回りとほぼ等価ということです。
この数字を見ると、物件探しやリフォームの苦労を考えると、それ程割のいい投資でもないことが分かります。
誰にでもでき、ほったらかしが可能なインデックスの積立投資と苦労の割にはリターンが変わらない訳ですから。
Hさん:
「えっ、そうなんですか!? 表面利回り18%で、とても良い投資に思えたんですが…。10年後で評価するとそれ程でもないんですね。利回り4.5%かあ。」
それが出口を考えることの重要性なんです。購入直後だけではなく、長期的なトータルリターンで考えるんです。
ただ、出口の条件が変われば結果も変わってきます。
もしオーナーチェンジであることの利点やリフォーム済みであることで、期待収益率が15.0%で売却できたとしましょう。
図は付けませんが、ぜひご自分で後で確認してくださいね。
この場合、売価は540万円(90÷0.15)です。
キャピタルゲインが540万円に増え(別途諸経費有り)、インカムゲインは約700万円と変わらないので(かなり甘めの試算)
計 約1240万円 になります。
結果、資産増加倍率は1.8倍(1240÷690)となり、1年利回りに直すと6%程度です。これなら積立てに比べて優位性があると言えます。
Hさん:
「つまり410万円で売れると利回り4.5%で、540万円で売れると利回り6.0%ということですね。いかに高く売るか、高く売れる時期に売るかが大事なんですね。」
「やんつさんが、市況の良い時に売却することがトータルリターンを最大化するコツ、というのがようやく分かってきました。」
ありがとうございます。
築古戸建てをまとめると
・金額が手頃で、ローン無しでも取り組みが可能
・リフォーム費用のコストダウンが必須
・リターンはリフォーム費用と売却額次第。レバレッジが掛かっていない分、高値売却が出来なければ大きなリターンを生みにくい
・入居付けに苦労はするが、入居後は安定的
といったところでしょうか。
物件評価の6パートは、こうやって数字を色々変えながら入力してみることで、様々な気付きが生まれるんですよ。ぜひ使ってみてください。
次回はケーススタディとして、最もポピュラーな中古アパートを取りあげますね。
今回の築古戸建てと比較してみてください。
Hさん:
「ありがとうございます!」
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回もケーススタディです。