投資信託はどう選ぶ?(7)ロボットアドバイザーを考える
Sep 30, 2020
人生はわくわくとドキドキで出来ている! サラリーマン上がりの運用相談専門FPやんつです。
社会人としてお金のことを勉強したいあなたと、アクティブシニアになりたいあなたへ・・
膨大な投資信託の正しい選び方を考えるシリーズ、七回目です。
今回はクライアントからも最近質問が出るロボットアドバイザーの有効性を確認してみます。
通称ロボアドと呼ばれており、AIやロボットに運用を任せられます、と正にフィンテック時代のサービス。最近各社力を入れています。そのコストや商品構成をチェックします。
対象にしたのは、独立系からは2大ライバルといっていいWealthNavi(ウェルスナビ)とTHEO(テオ)です。新興勢力として外せないところ。
ネット系からは楽天証券、マネックス証券、SBI証券。ネットの代表選手として、こちらも依存のない所でしょう。
大手証券からは野村証券、大和証券、SMBC日興証券。営業収益の大きい順に選んでみました。
計8社を調べてみます。 どんなサービスなんでしょう?
(わたし自身は独立系の2社を利用中)
独立系 …WealthNavi(ウェルスナビ)
独立系 …THEO(テオ)
ネット証券…楽天証券
ネット証券…マネックス証券
ネット証券…SBI証券
大手証券 …野村証券
大手証券 …大和証券
大手証券 …SMBC日興証券
(調査日:2020/09/30)
手数料は各社1.0%程度、大きな差はありません。機能的にも自動購入、積立、自動リバランス等を各社包含しており、あまり差がないようです。
構成商品にやや違いがあり、海外ETF派と投資信託派に分かれます。投資信託派はマネックスを除き6資産クラス(国内株式、海外株式、国内債券、海外債券、国内REIT、海外REIT)で構成されているところは同じ。
一部、海外を先進国、新興国と分離しているところもありましたが、大きな差ではありません。
簡単な質問に答え、顧客のリスク許容度を判定し、構成商品の保有割合を自動調節するところも各社共通です。
■ 各社ロボアド比較
各社の内容を見てみます。
《独立系》
WealthNavi、THEO、共に海外ETFをベースにしているのは同じです。
預かり資産はWealthNaviが2900億円、THEOが600億円と差が付いていますが、これはSBI証券がWealthNaviを採用していることが大きいようです。SBIだけで預り2300億円を達成しており、これを除くとほぼ同程度。(以前はSBIでも両者から選択できたと記憶していますが…。経緯は不明です)
WealthNaviはVTI(米国株)、VEA(日欧株)、VWO(新興国株)、AGG(米国債券)、GLD(金)、IYR(不動産)という6種のETFで構成されます。
一方、THEOはEWJ(日本)、VTV(米国大型割安株)、QQQ(米国NASDAQ大型株)など細分化されたETFで構成されており、台湾やインドなどのETFも入っているのが特長です。グロース(株式中心)、インカム(債券中心)、インフレヘッジ(実物資産中心)の3分野に分類された最大30種類以上のETFが自動的に割り当てられます。
どちらもリスク許容度は5種類に分けられ(リスク種類)、質問の回答により保守的から積極的の範囲で決められます。
どちらかというとTHEOの方が多くのETFで分散している分、下落局面に強そうですが、反面上がりにくいかもしれません。
どちらも内容としては納得できるETFの構成で、初心者にお勧めの商品です。
《ネット系》
楽天証券の楽ラップは固定報酬は0.715%ですが、別途ファンド毎の信託報酬が加算されるので、結局は約1.0%の手数料となります。成功報酬型もあるようです。
国内株1、外国株5、債券1、外国6、REIT2の計15種のファンドを5ランクで自動配分します。使用商品はステートストリート、たわらノーロードなどの運用商品です。
マネックス証券ではON COMPASSという名称です。リスク種別は8つで他より細分化されています。世界80カ国、約5万銘柄に分散投資(ETF)とうたっていますが、TOPIX連動ETFやVTI(米国株式)などの国内外ETFがその正体です。
マネックスにはON COMPASS以外に、ManexAdviserというアドバイスサービスがあり自動購入ではなく、提案という形で国内ETFの組み合わせ提示を受けられます。
0.496%と手数料も安く、色んな条件設定で配分計算も変更でき、ETF種類も豊富です。ベテランの方にはこちらが向いているかもしれません。(表には含めていません)
SBIは前述の通り、WealthNaviを採用しています。
《大手系》
野村証券は「のむラップファンド」としてメニュー化しており、6資産クラスから国内REITを除外していました。高値圏という判断かもしれません。
構成ファンドが自社独自商品というのは野村ならでは。ほぼ唯一、購入手数料がかかるというのはどうかと思いますが、お任せの多い富裕層を想定しているからでしょうか。
大和証券のファンドラップは標準的な6資産で構成。多くは日本TOPIX、先進国MSCIコクサイなどを指標とする自社投資信託のようです。
SMBC日興証券のfund eyeはロボアドというより、ファンド絞り込みサポートツール の位置付け。やってみましたが、あまり納得性のある商品選定とは感じませんでした。
別にAI株式ポートフォリオ診断というのがあり、個別株式の保有に関するAI診断のようです。エンジンはAIベンチャーのHEROZが開発したということで、ファンド選定ではありませんが、別途試してみたいと思います。
概して、大手証券は自社商品の拡販ツールのようで魅力を感じませんでした。
■ 評価
各社とも資産クラスが5~6種に分散されており、堅実投資用といえます。構成が投資信託かETFかという違いはありますが、王道のインデックス系です。
値動きやリターンはほぼ同じようなものと推察され、あまり大きな違いは感じませんでした。
初心者が選ぶ場合、どれでも同じようなものとの評価です。
(個人的には海外ETF派が好みです)
ただ各社とも、ロボアドといっても簡単な質問により顧客のリスク許容度を判定し、ファンド配分メニューの中から自動的に選ぶという程度のもの。
そんな簡単な質問でその人のリスク許容度が分かるのかと、疑問も感じます。
実際にやってみましたが、理解に苦しむ質問も多かったです。ロボアドというなら、その人ならではの個別ポートフォリオを作成するぐらいの機能は欲しいです。
使用するポートフォリオ理論も従来通りのものでいささか残念。ノーベル賞に輝いた金融工学に基づき…云々といっても、ちっとも有効ではない「有効フロンティア論」などに基づいています。資産クラスに債券を入れるなどベースとなる考え方が時代を反映しておらず、旧態依然としています。
資産クラス別のリスク値をどの頻度で更新しているのか? どんな修正をAIとして入れているのか?
これらの理論は数学的には正しくても実務では使えません。単に過去の統計からリスク値や期待収益率を出すのではなく、もっとダイナミックにAIを使ったリスク値の自動学習とか現実の相場の動きを反映して欲しいものです。
■ まとめ
商品選定できない(したくない)初心者向けのサービス。堅実な投資をお任せで行うには、可もなく不可もなくまずまずでしょう。
使えるサービスですが、勉強後は自分で購入する方が良さそう。
ロボット、AIの活用レベルがまだまだ低く、ロボアドという割にはまだまだお粗末。今後の発展を期待します。
お金を味方に付ければ、人生二馬力、三馬力!
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
※本記事は特定の商品を推奨、あるいは誹謗中傷するものではなくあくまで筆者の個人的な見解に基づく記事です。