投資信託はこう選ぶ NISA、iDeCoの正しい選び方(2)
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iDeCoの正しい商品の選び方について、フリーランスの宮田(50代、女性)さんを迎えての引き続きのご説明です。
少し時間が空いてしまいましたね。前回の話は覚えてますか?
宮田
「資産(アセット)クラスという分類を教えていただきました。運用の対象として株式、債券、REIT(不動産投資信託)、コモデティ・金などの種類があるんでしたよね。」
そうですね。対象地域でさらに国内、先進国、新興国などでも分類されています。
今回は投資家向け情報提供で定評のあるモーニングスター社のデータでご説明します。
表をみてください。
これは、2008年から2020年までの13年間の資産別平均リターンとリスク値をわたしが集計したものです。これでどんな資産に投資するのがいいのか考えてみましょう。
平均リターンは13年間の単純平均利回りで、リスク値は変動幅を表します。
リスク値の意味については、少し難しいので今度ゆっくり解説するとして、平均リターンが高くてリスク値が低いのが優良な投資対象と覚えてください。
この表から何がわかりますか? 宮田さん、少し考えてみてください。
■ 資産(アセット)クラス別リスクとリターン
まず株式をみてみましょう。こうなってますね。
《株式》13年間平均リターン、リスク値
・国 内 4.0%、21.5
・先進国 8.2%、22.0
・新興国 4.8%、32.1
「日本はあんまり経済成長してない印象があるんですが、4.0%も利回りがあるんですね!」
そうですね、日本株式は2012~2015年のアベノミクスで大きく値を上げていますので、それを反映した数字です。
「先進国って8.2%ですか! ちょっと驚きました。」
リーマンショック以後日本の株式も悪くは無かったんですが、米国を含む先進国では実はもっと成長してたことが分かります。
先進国株式と国内株式はリスクが同程度ですから、投資するならよりリターンが高い先進国株式が良さそうということが分かりますね。日本の経済成長がこれから大きく見込めるなら別ですが…。
「うーん。将来の成長期待は米国や先進国の方がありそうな気がします。日本は対象外にしちゃいましょう!」
あはは、宮田さんだけじゃなく皆さん日本については悲観的ですなんですよね~。
新興国株式については、リターンは国内株式よりやや良かったという結果ですがやはりリスクが高いですね。この辺は、好みで少しポートフォリオに組み込むかという感じでしょうか。
次に債券を見てみましょう。
《債券》
・国 内 0.9%、1,2
・先進国 -0.9%、5.2
・新興国 -1.7%、7.7
「あれっ!? 先進国と新興国は利回りがマイナスなんですね。」
前回、世界中が低金利になっている今は債券を選択する必然性が薄いという話をしましたが、その理由が分かっていただけると思います。債券はリスクは低いもののリターンが低すぎるわけです。
なんとモーニングスターでは2019年からは数値表示そのものがなくなりました。
債券を組み込むのは世界的に金利上昇傾向が出てからで十分と思います。米国でも2023年までは低金利政策が続くとみられていますから。
教科書ではリスク分散のために債券を入れましょうと書いてあるんですが、これは超長期では正しいんですが、今の低金利時代を反映していない説明なんです。
その他の資産もみてみましょう。
《REIT、他》
・国 内REIT 3.2%、24.8
・先進国REIT 0.7%、24.5
・コモデティ・金 5.0%、16.7
国内REITは海外と同程度のリスクでリターンが高いですね。選ぶなら国内が底堅そうです。
ただREITは元来分配金狙いの商品なので、安値圏の時に購入して3~4%の分配金を確保するという性質のものです。
メインではありませんが、一定割合を組み込むのは有効といえます。
REITは実は株式系投資信託との違いがあまり理解されてません。
この辺は、時間がある時に細かくご説明しますね。
コモデティ・金はリターンは中程度ですが、リスクも低く安定的です。
これはコロナ禍での金の高騰を受けた数値なので、少し割引いてみる必要があるかもしれません。金は過去の最高値圏と同水準になっていますので、今後については警戒が必要でしょう。
■ 投資タイミングの重要性
もう少しこの表を見てみましょう。右端に通算リターンを算出しています。これは実際に投資していたらどうだったのかを計算しています。
上段が2007年末に100を投資した場合の2020年末の資産残高で、下段()が2008年末に投資した場合の残高です。
つまりリーマンショック前に投資した場合と、リーマンショック後に投資した場合を比較したわけです。
・国内株式では
2007年末投資残高 122.1
2008年末投資残高 209.8
です。
つまりリーマンショック前(2007年末)に投資をすると、一旦その後のリーマンショックで大きく値を下げるため13年後も1.22倍にしかなっていません。
ところがリーマンショック後(2008年末)の安くなった時に投資をすると、2倍以上になっているんです。大きな差ですね。
先進国と新興国もみてみましょう。
・先進国株式
2007年末開始残高 190.8
2008年末開始残高 420.3
・新興国国株式
2007年末開始残高 87.9
2008年末開始残高 249.8
いずれも2007年末に投資した場合と2008年末に投資した場合では2倍以上の大きな差があることが分かります。新興国ではリーマンショック前に投資した場合、いまだにマイナスです。
「えーっと…。 つまり安い時に買うのが大事ということですか?」
そうなんです。当たり前のことですが株式は値動きが大きいため、購入タイミングがパフォーマンスに大きな影響を与えます。
問題は、何時がそのタイミングか誰にも分からないということです。
じっと暴落を待つ選択肢もありますが、何時までも運用開始できないままでは機会損失になるかもしれません。
また、下落時にはどこまで下げるか分からないので、なかなか手を出せないということが起こります。
特に初心者の方は、何時が投資タイミングかを判断するのは難しいと思います。暴落時はみんなが悲観的になるので冷静に判断するのが難しいんです。2020年3月のコロナショックで株式は大きく下げましたが、ここで買えるのはベテラン投資家の方でしょう。
「じゃあ、わたしみたいな初心者はどうすればいいんですか?」
実は、初心者の方が覚えておくべき「ドルコスト平均法」というのがあります。
■ ドルコスト平均法による効果
ドルコスト平均法とは、価格が変動する商品について一定の金額で定期的に購入していく方法です。つまり積立投資ですね。
このブログでも、以前 「投資の基本。ドルコスト平均法のウソ、ホント!」で書いていますので、よかったら後で読んでみてください。
先ほどの表に、毎年一定額を積立てた場合の残高を追加しました。
右端のドルコスト平均法の部分をみてください。
上段が2007年末から積立てた場合の最終残高で、下段が2008年末から積立てた場合です。
・国内株式
2007年末開始残高 154.7
2008年末開始残高 157.4
・先進国株式
2007年末開始残高 220.7
2008年末開始残高 223.2
見ていただきたいのは、この方法では2007年、2008年のいずれに積立てを始めても、ほぼ似たようなリターンになっていることです。
しかもコツコツと積立てた場合の方が、リーマンショック前に投資した場合よりも良いパフォーマンスになっています。
もちろん、リーマンショック後の安値の時に投資したようなパフォーマンスには届きませんが、そこそこ堅実な利回りになっていることが分かります。
つまり積立投資は、タイミングを気にしないで初心者が堅実なリターンを得られる手法だということです。
積立NISAやiDeCoはこの手法を前提としていますので、誰でも相場状況を気にせ何時からでも始めればいいということですね。
積立ならタイミングを気にせず、何を買うかだけ考えればいいわけです。
「わたしにぴったりかもしれません。10年で1.5~2.0倍になるんなら十分です。」
確実にそのリターンになるかは分かりませんが、とても負けにくい投資手法なんです。
さて、今日のまとめは 投資はタイミングが重要だけど、初心者には難しいのでタイミングを気にしない積立てで始めましょう。 です。
理解していただけましたか?
「はい! 少し購入商品が絞れる気がしてきました。」
次回はいよいよiDeCoとNISAの商品選定です。
検討すべきは先進国株式と国内REITが中心ということも今回分かりましたよね。
その上で実際の商品をみてみましょう。楽しみにしてください。
「よろしくお願いいたします。」
お金を味方に付ければ、人生二馬力、三馬力!
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございます。